海運

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2022年1月14日

【インタビュー】
ONEジャパン・中井拓志社長
日本発着輸送を最大限サポート

中井拓志社長

 オーシャン・ネットワーク・エクスプレス・ジャパンは、日本への多くの直航サービスを生かして安定輸送の確保に努めている。依然として需給タイトな状況は続くものの、情報発信の徹底やオペレーション体制全般の細やかな運営を通じ、輸出入の輸送需要を最大限サポートする体制を目指していく方針だ。ONEジャパンの中井拓志社長に2022年の抱負と見通しを聞いた。(文中敬称略、聞き手・小堺祐樹、兼武理保子)

 ――21年のコンテナ船市況は異例の推移を辿った。コンテナ船輸送が果たす役割や市況の変化について、どのような印象を持ったか聞きたい。

 中井 コンテナ船事業には長年携わってきたが、こういうマーケットは初めての経験だ。もちろん過去にも運賃の変動、乱高下はあったが、ここまで需給が逼迫して短期の運賃マーケットが大きく上昇したことはなかった。その反面、本来あるべきしっかりとした輸送サービスが提供できておらず、この点は本当に忸怩たる思いだ。運賃に関しては完全にマーケットが決めること、この部分はわれわれにもいかんともしがたいが、安定輸送というコンテナ船社としての使命を果たしきれていないことについては、顧客に対して申し訳ない思いでいる。混雑や遅延の悪化として欠便が発生し、稼働船腹そのものが目減りしたことで、顧客にご満足頂けるようなスペース・コンテナの安定供給、そして定時性といったサービスクオリティが下がってしまった。特に定時性は、コンテナ船社が果たすべき大事な使命と認識しているだけに、申し訳ないという思いが強い。当社としても今、できる限りのことに取り組んでいるのだが、まだ抜本的な対策には乏しいという現実もある。業界全体の問題でもあり、船社の1社1社が具体的に何に取り組むのかが大事なのではないかと思う。

 ――ONEジャパンとして、これまでの取り組みはどう評価を?

 中井 顧客にご満足いただけるサービス・輸送を提供できていないという事実の一方で、期待度も高くなっているということははっきりと認識している。ONEは日本で最もマーケットシェアが高く、多くの直航サービスを寄港させている。全ての港というわけではないが、主要なところについては直航サービスでカバーしており、このメリットを最大限生かしてできる限りのことに取り組んできた。顧客からはさらにもっと取り組んで欲しいという期待度が高く、この点はひしひしと感じており、我々としてできる責任と役割を最大限果たしていきたい。

 ――足元の日本発着トレードにおける輸出入荷動きはどうか。

 中井 アジアでは輸出入ともに旺盛な荷動きが続いており、コロナのロックダウンが解除されたベトナムでは、経済活動の正常化に伴って荷動きもだいぶ戻ってきた。一方で日本では、顕著な変化はあまりないのではないかと思う。アジアの中で高い成長率を維持しているような国であればそうした変化はあるかも知れないが、日本ではそうした動きは見られない。ただ経済活動が循環するようになり、輸入と輸出双方で荷動きが戻ってきたということは感じている。20年に一度大きく減少したが、今はほぼ元の輸送需要を取り戻し、また一部の地域によってはコロナ前以上の旺盛な需要が出ている。特に輸入は旺盛な荷動きが続いている。

 ――なかなか輸送混乱の解消のめどが立たない。

 中井 北米におけるさまざまな消費需要が、コロナ前と比べても明白に増えている。アジアはさまざまな貨物の供給側であり、車にせよ他の工業製品にせよ、需要地側の消費意欲が高まってくれば荷動きは増えてくる。自動車分野では半導体不足問題などで供給が不安定になる時期もあったが、その後状況は改善してきた。個々の顧客によって状況はさまざまで、このまま不透明性を抱えながら今後も進んでいくこととなるだろう。なんらかのタイミングでモノの消費が沈静化していけば足元の混乱も徐々に落ち着いていくはずだが、多くのボトルネックが解消して実際に物流が正常化するには、荷動きの沈静化が始まってから少なくとも3カ月ぐらいは要するのではないかと見ている。

 ――来期の長期契約交渉が本格化しているが、顧客からはどのような声が多いか。

 中井 安定輸送を確保したいという思いに尽きると思う。船腹はもちろんコンテナそのものの供給も含めて、過去1年間でいろいろとご苦労されてこられた分、船会社に対して安定したサービスの提供を求める声が強い。それをいかに担保できるのかが当社にとって最大の関心事であり、顧客にとっても同様だ。例年より早い段階から交渉が始まっているというのも、そうした危機感の表れと捉えている。私自身は、必ずしも交渉において早い者勝ちという発想はしていないが、早い段階からそうしたお話しを頂けることは有難いことと捉えている。

 ――日本発着の船腹が増えることが期待しづらい一方、旺盛な船積み需要で需給が逼迫している。

 中井 22年度において、輸送スペースを増やすというのは非常に難しいのが実情だ。一方でこれまでサポートして頂いた顧客の方々への責任があり、まずはそうした方々との安定した関係を重視して取り組んでいきたい。ただ、そうした中にあって、個々の話し合いの中でポートフォリオが入れ替わるという可能性も当然出てくるとは思う。

 ――運賃水準の上昇を予想する声が多い。

 中井 この部分はあくまでマーケットで決まるところだ。複数年契約という話も出てはいるが、これは我々にとっても顧客にとっても、取引の根幹に関わる部分の話であり、そう簡単に合意形成できるものではない。ただ、もちろん可能性としてはあるので、顧客から見て興味を持って頂けている範囲では、我々としてもしっかりとアイディアを提案させて頂きたい。反対に、複数年契約でなければスペースを出さないとかそういったことは考えていない。今の状況をテコにして長期に渡って貨物や運賃水準を固めようとすることはあってはならないと思う。

 ――今年はILWU交渉の行方も懸念されているが、現時点での見通しはどうか。

 中井 今のところ西岸労使交渉があるからと言って、予め東岸ルートのシェアを増やすといった話が具体的に出ている状況ではないと認識している。一方で顧客側の考えとしては、当然ながら事前に在庫を積み増して備えようという動きになっていくだろう。現実問題として、西岸ルートのあれだけの物量を他へシフトすることは難しく、まして今すでに混雑している状況であれば瞬く間にパンクしてしまう。我々としては精確で素早い情報提供を心掛けるというところに尽きる。

 ――輸送安定化に向け、ONEジャパンとしてできること、取り組むことは。

 中井 我々にとってベースとなるのは日本への直航サービスだが、一方で韓国トランシップや、西航ではシンガポールでのトランシップなどさまざまなルートを使い分けている。日韓間であれば、昨年から自営のフィーダー輸送サービスを開設したほか、アジア域内航路の輸送スペースを活用したり、あるいは他船社のスペースを活用するなどさまざまな手法があるが、そうした輸送キャパシティの部分はしっかりと確保して安定輸送に繋げたい。顧客との交渉が例年より早く始まっている分、こうした話もより早く進める必要がある。昨今の状況では、特にトランシップでなければ対応できない港・地域での安定輸送の確保が特に急務だ。今は釜山にせよシンガポールにせよ、非常に混雑しており、もともと計画していた輸送体制では間に合わないということが頻繁に起きるようになっている。この部分は、非常に細かいところまでコントロールしながらなんとか維持しているというのが現状で、こうした取り組みは今後も続けていく必要がある。

 ――足元の輸送混乱とは別に、ONEジャパンとしてサービス強化に取り組みたいことは。

 中井 これは以前から言っているが、地方港展開と、内陸デポのさらなる活用によるコンテナラウンドユースはさらに促進していきたい。ただ、それらを進めるうえで大切になるのは輸出入のマッチング。輸出だけ増やそうとして取り組めるものではなく、まず輸入貨物があり、そのコンテナをうまく活用して輸出に繋げていく。しかし、今は輸送混乱の影響で、本来地方港に入るはずだった輸入量が減っている。コンテナの回転率をいかに上げるかが現在は重要であり、内陸デポに潤沢に在庫を置いておくことも難しく、バランスは非常に難しい。ただ関西や瀬戸内では、地道に取り組んできた成果が徐々に出てきている。日本は成熟したマーケットだが、手を付けてこれなかったことはやはりあるので、発想を変えてチャンスがある限りは取り組んでいきたい。