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2020年3月27日無料公開記事

【リーファー輸送特集】リーファー輸送最前線 新技術・サービス登場続々

 政府は今月、農林水産品の輸出額を10年後をめどに5兆円に増やす新たな長期目標を正式に決めた。昨年時点での輸出額は9000億円超となり、目標としていた1兆円には届かなかったものの、18年比で続伸。政府がさらに高い目標を置いたことで、今後の輸出拡大にさらに拍車がかかりそうだ。今回の特集では、コンテナを中心に冷凍・冷蔵保管と輸送の技術やサービスの最新動向を紹介する。
■CA、電圧など新技術さまざま

 海上輸送分野では、リーファーコンテナを中心に鮮度保持やIoT技術と組み合わせた新たな技術・サービスが登場してきている。

 まず、注目はCA(Controlled Atmosphere)コンテナだ。CAコンテナは、コンテナ庫内の空気組成をコントロールし、酸素濃度を減らしつつ窒素リッチな空気組成とすることで、青果物など貨物の鮮度を維持する機能を備える。青果物の呼吸を利用してCA環境を作るパッシブ型と、コンテナ庫内に窒素を送り込むアクティブ型の2つがあるが、初期コストやランニングコストなどで競争力があることから、現在は主流はパッシブ型だ。特にCAコンテナの主戦場である南米産のバナナやアボカドは呼吸量が多いため、CA環境を作りやすく、パッシブ型が幅広く活用されてきた。

 一方、日本ではダイキン工業が2016年にアクティブ型CAコンテナを投入。当初は一部船社で、主に日本発の農産品輸出などを中心に活用されていたが、近年は採用する船社が増加。投入される航路も南米航路やニュージーランド、南アフリカなどに広がり、伝統的にパッシブ型を利用していた貨物でも一部でアクティブ型を使用するケースが増えてきた。さらに今年は、リーファーコンテナ最大手のキャリア・トランジコールドも、アクティブ型CAコンテナ「エバーフレッシュ」の次世代モデルを投入予定。もともとアクティブ型CAは、キャリア社が他社に先駆けて20年以上前に初めて投入したもので、今回のリニューアルを機に性能や価格競争力の強化を目指す方針だ。

 さらに、最近注目されている鮮度保持技術が「電圧」タイプだ。ここ数年で、生鮮食品などに電圧をかけて鮮度維持を図るリーファーコンテナが海上輸送に登場しつつある。国内では、もともと業務用冷蔵・冷凍倉庫の鮮度保持システムとして利用されてきた技術だが、近年、鉄道用の12フィートコンテナやISOコンテナにも搭載する動きが加速。青果物だけでなく、呼吸しない肉類や花き類でも効果が認められることから、海運会社側も関心を寄せている。

 日通商事は16年に、この鮮度保持機能を持つ特殊冷蔵コンテナ「fresh bank」の試作機を開発。群馬県に本社を置くMARS Companyとの提携で開発したもので、またMARS Companyには昨年、商社大手の住友商事が出資している。さらにオズアンドテック(O’s&Tech)社は「Wi-Free」の名称で、鮮度保持機能とコスト低減を図った独自のリーファーコンテナを開発。EFインターナショナルが販売・普及に努めている。また昨年末には、鮮度保持装置メーカーのDENBA が、中国のコンテナメーカー大手であるCIMC揚州通利と提携し、20フィート型リーファーコンテナを開発した。関係者によると、いずれも基礎となる技術は共通だが、コンテナ庫内の機材設置方法、電圧のかけ方や貨物蔵置の方法などで差異があるという。

■広がり見せるリーファーLCL

 日本からの食品輸出という観点で、リーファー海上混載サービスがこれまでにない広がりを見せている。日本出しの貨物は野菜や果物、あるいは酒類といった高付加価値のものが多いが、一方で物量としてはまだ多くはない。従来はFCLか、あるいは仕向地によっては航空輸送などに頼らざるを得なかったが、少量多品種の輸送に対応するリーファー海上混載サービスのメニューが徐々に広がってきた。

 もともと混載輸送サービス自体の需要はあったものの、サービス開設にあたってボトルネックになっていたのが冷凍・冷蔵機能に対応したCFS機能の不足だ。アジアではこれまで、香港やシンガポールなど一部の仕向地のみに限定されてきたが、需要の伸びに伴って徐々に新たな広がりを見せるようになってきた。従来は香港向けが多かったが、最近では台湾やシンガポール向けを中心に新規サービスの開設が増加してきた。

 ユニエツクスNCTはもともと、シーフリゴとの提携で日本向け輸入での冷凍・冷蔵混載サービスを手掛けていたが、18年から神戸発で初のリーファー混載サービスを開始。昨年からは横浜発も追加し、香港やシンガポール向けLCLサービスを提供している。また、苫小牧埠頭は昨年、苫小牧港発シンガポール向けでサービスを開始した。このリーファー混載サービスは、もともと苫小牧港利用促進協議会の支援を受けて始まったもので、苫小牧埠頭のほかナラサキスタックスも参画。ナラサキスタックスは大手NVOCCのECUワールドワイドと協力し、台湾・基隆向けの冷凍混載サービスを提供している。セイノーロジックスも昨年、香港向けサービスの便数を増便するとともに、今年から新たにシンガポールと台湾向けで新サービスを開始する予定だ。

 また、製薬大手の大塚グループで飲料・食品や医薬品などの物流を担う大塚倉庫も、リーファー混載を強化中。リーファーコンテナ庫内で指定した温度帯ごとに小口に区分けできるパレットサイズのカートンを開発し、マイナス2度からプラス8度の間で品目ごとに適した輸送温度を保つことで、品質を担保したリーファー小口輸送を実現させるなど、独自のサービスを生み出している。

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■ダイキン工業
好調アクティブCA、採用船社が拡大


 ダイキン工業が2016年から投入を開始したアクティブ型CA(Controlled Atmosphere)コンテナの販売が好調だ。リーファー輸送で差別化を図りたいコンテナ船社や、繊細な貨物を取り扱う荷主を対象に営業を強化してきたことで、採用船社のみならず輸送する貨物でも幅が広がってきた。今年度は2000台以上を販売しており、20年はアジア系船社を中心にさらに上積みを目指したい考え。ダイキン工業は「アクティブCAコンテナの認知が進んできた」と手応えを得ており、今後もアクティブCAのメリットを発揮しやすい貨物を対象に開拓を進めていく方針だ。

 ダイキン工業は海上コンテナ用冷凍機分野で約20%のシェアを有し、同分野最大手の米キャリアに次いで第2位。通常のリーファーコンテナでは「LXE」と「ZeSTIA(ゼスティア)」の2つをラインナップしている。さらに16年には、オプションとしてアクティブCAコンテナの導入を開始した。アクティブCAはコンテナ庫内の空気組成を変え、窒素リッチに、かつ酸素濃度を下げることで青果物の呼吸を抑制し、鮮度を保持することができる。青果物などの呼吸を利用してCA環境を作るパッシブ型と比べ、貨物量や貨物の呼吸量、輸送時間などに左右されずCA環境を作ることができるのが強みだ。

 当初は邦船社の一部に採用されるのみだったが、その後は徐々に導入船社が増加。現在はONE(オーシャン・ネットワーク・エクスプレス)に加えてCMA-CGMが導入し、それぞれ「Coolextended CA 」、「CLIMACTIVE」のサービス名称でアクティブCAコンテナの利用拡大を進める。それ以外でも、米国船社のシーボードマリンや果物大手のチキータなどが相次ぎ導入。アジア系ではコスコ・コンテナラインズや現代商船が導入し、主に北南米からアジア向けの輸入で利用している。

 今年度の販売台数は、2000台以上。採用船社の増加に加え、輸送する貨物でも幅が広がってきた。台湾やペルー、インドネシアなどさまざまな地域で各国のローカルフルーツなど、トライアル輸送を実施。アクティブCAの活用による輸出の実現を目指す。低温事業本部営業部の鉄屋克浩営業部長は「荷主に直接、アクティブCAのメリットをPRしてきたことで、認知が進んできた。今後も、アクティブCAのメリットを最大限出せる貨物をターゲットに開拓を進めていきたい。2020年は販売台数をさらに上積みすることを目指している」と話す。

 バナナやアボカドなど、これまでパッシブ型コンテナによるCA輸送がメーンだった貨物でも、アクティブCAコンテナの利用が徐々に始まっている。これらの貨物では従来、輸送開始時にコンテナ内や袋詰めした後に窒素などを充填することで疑似的にCA環境を作り、輸送するケースもが多かったが、特にバナナは雨季になると傷
みやい傾向が見られた。これをアクティブCAコンテナへと切り替えることで、輸送品質の向上や作業性の改善などを図ることができるという。アボカドでも、ペルーやニュージーランド、南アフリカなど、産地や収穫時期によって含まれる油分に差があり、最適なCA環境にも差があると考えられている。児玉貴久課長は「個々の条件に応じて設定を変え、特に輸送初期の段階で適切なCA環境を作ることが重要。当社のアクティブCAコンテナも投入以来、制御機能を強化して酸素や二酸化炭素濃度を柔軟に変更できるようになっている」と話す。

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■EFインターナショナル
リーファーで多様な需要に対応


 新造・中古コンテナの売買や改造コンテナの販売を手掛けるEFインターナショナルは、大手冷凍機メーカー、サーモキングの日本代理店として同社のリーファーコンテナの利用拡大に取り組んでいる。サーモキングはリーファーコンテナの草分け的な存在で、世界で初めて冷凍コンテナを製造した会社。高い冷却性能と信頼性が強みだ。また、EFインターナショナルはコンテナ全般のトレーディング会社として、新造や中古でのリーファーコンテナの販売・レンタルなども手掛けており、さまざまな需要に対応している。

 サーモキングの主力製品は、マイナス40度の冷却性能を持つリーファーコンテナユニット「マグナム・プラス」と、マイナス60度の超低温輸送が可能な「スーパー・フリーザー」の2つのリーファーコンテナ機器だ。「マグナム・プラス」は、一般的に使用される冷凍触媒“R-134A”に比べ、より高い冷却効率を持つ“R-404A、R-452A”を採用しているのが特徴。以前の「マグナム」の冷却性能が最大でマイナス35度だったのに対し、「マグナム・プラス」ではマイナス40度までの冷却性能を発揮することができ、これは他の一般的なリーファーコンテナと比べても高い冷却性能となる。同時に電力消費量も従来型に比べてほぼ半減されているほか、耐久性・信頼性でも定評がある。

 「マグナム・プラス」はオプションとして、空気管理システムの「AFAM(アドバンスド・フレッシュ・エア・マネジメント)プラス」を付加することも可能だ。「AFAMプラス」は高規格のマイクロプロセッサーの制御により、コンテナ庫内の換気量を自動で制御するもの。コンテナ内のCO2とO2の比率を最適値にし、その合計を、外気と同じ約21%に保つよう管理することができる。CA(Controlled Atmosphere)コンテナとは機能・性格はやや異なるものの、生鮮品などの鮮度維持に有効となっている。

 また、「スーパー・フリーザー」は、マイナス60度という超低温での輸送を可能とするコンテナ業界でも唯一の機種だ。冷凍マグロやメカジキ、アイスクリームといった高付加価値貨物を対象に、超低温状態で輸送を行うことで鮮度や食感を維持することができる。「マグナム・プラス」のような汎用機種とは異なるが、圧倒的な冷却性能から、この「スーパー・フリーザー」でなければ運べない、といった貨物が存在することから根強い人気を誇る。

 EFインターナショナルはサーモキングの代理店に加え、新造および中古リーファーコンテナの販売・レンタルも取り扱っている。もともとEFインターナショナルは、中古コンテナの売買や改造コンテナの販売事業を中核に2010年に設立。現在はタンクコンテナも含むさまざまなタイプの特殊コンテナに加え、セキュリティシールやコンテナ用荷役機器、中堅リース会社の代理店と、コンテナに関する総合的なコンサルティング会社として独自の地位を築いている。リーファーコンテナにおいては、幅広い知見を生かして販売では日本全国、レンタルに関しては関東圏を中心に展開しており、多様な需要に対応している。

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■OOCL
「他社では運べない貨物」で差別化


 OOCLは、これまで培ってきたリーファー輸送の経験を生かして差別化に取り組んでいる。主な取り組み分野は生鮮品や医薬品などの高付加価値貨物、危険品など。OOCL日本支社の田中一夫統括部長は「他社では運べない貨物を運ぶことで差別化につなげたい」と話す。

 まず、力を入れるのが青果物だ。最近ではCAコンテナの活用が増えているが、田中統括部長は「アジア域内なら、必ずしもCAを使わず鮮度保持が可能だ」という。ポイントはコンテナ庫内の温度設定とベンチレーション開度。一般的に温度設定は“高すぎ”、ベンチレーションは“開けすぎ”の傾向が見られ、かえって鮮度保持にマイナスとなってしまっている。「ベンチレーション開度なら75CMH以下、温度も0度前後が望ましい。商材次第だが、アジア域内なら十分、CAと遜色ない鮮度保持ができる」という。もちろん輸送距離が長かったり、あるいは性質上、温度を落とせない商材もあるため、その場合はCAコンテナを使うなど柔軟に使い分けている。

 また、日本独自のサービスとして、医薬品などの高付加価値貨物の輸送も開始した。通常、保険金額が50万ドルを超えるリーファー貨物は貨物P&I保険の対象外となるため、輸送受託が難しい。そこでOOCLは大手保険会社との間で包括予定保険契約を締結。50万ドル以上の高額貨物でも保険適用を受け、リーファー輸送を受託する体制を整えた。田中統括部長は「航空輸送に比べ、輸送コストを大幅に低減できる。顧客自身の貨物保険契約もあるため、スムーズには行かないケースもあるが、引き合いは非常に多い」としており、今後も需要開拓を進める方針だ。

 また、危険品や欧米での内陸輸送も得意分野だ。危険品では、他船社に比べて受託可能なIMOクラスが幅広いのが強み。例えば、クラス8の腐食物。これらは輸送後に100度で高温洗浄する必要があり、どの船社でも受託できるものではないが、OOCLでは仕向地次第では対応可能。これ以外にも、需要が増えているクラス9や、他船社ではフラッシュポイントの下限が厳しいクラス3にも柔軟に対応できるという。

 米国内では、ロサンゼルス経由でシカゴ、アトランタ、カンザスシティ、ヒューストン、メンフィスなど主要内陸都市まで輸送が可能。いずれも鉄道ランプ渡しだが、シカゴに関しては受荷主倉庫までのドアデリバリー、40フィートだけでなく20フィート輸送も可能など柔軟性が非常に高い。欧州でもハンブルクやロッテルダム、ルアーブルなど主要港経由で、トラックまたはバージによる輸送を提供している。

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■セイノーロジックスの“ひんやり混載”
香港・台湾・星港向けサービス拡充


 海上混載大手のセイノーロジックスは、リーファー海上混載サービス「ひんやり混載」の仕向地を拡大してサービス強化を図る。昨年、香港向けサービスを増便したことで取扱量が大幅に増加。さらに仕向地拡大の要望も強いことから、新たに台湾およびシンガポール向けでも近日中にサービス提供を開始する。需要が伸びている九州でも、博多発香港向けのサービス開始を計画中だ。混載輸送部の市川優部長は「生鮮品の輸出市場は着実に広がっており、要望の多い仕向地を新たにサービスに追加して需要の取り込みを図っていきたい」としている。

 ひんやり混載は日本各地で生産される日本酒や調味料などの利用が多い。従来は航空便や、少量でもFCLを活用していた荷主などに対して主に提供しており、物量に見合った適正スペース・運賃で輸送できる点がメリットだ。

 現在の最大の仕向地は香港だ。温度帯は定温7度。2015年にサービスを開始し、当初のサービス頻度は月1便にとどまっていたが、昨年夏から横浜出しを隔週、神戸出しをウイークリーへとそれぞれ増便した。横浜出しは隔週でCFSカットが火曜、出港が土曜となっており、香港着が翌木曜。神戸発はCFSカットが毎週木曜、出港が水曜で、香港着が日曜となっている。市川部長は「月1便だったころは取り扱いが伸び悩んだが、増便を機に使い勝手が大きく向上し、取り扱いはもちろん引き合いも大幅に増加した」と話す。

 セイノーロジックスではこれを受け、さらにサービス体制を拡充する方針だ。まず近日中に、仕向地の拡大で特に要望の多かった台湾の基隆およびシンガポール向けで新たにひんやり混載を開始する。横浜・神戸出しで、まずはそれぞれ隔週サービスで提供を開始する予定で、将来的に需要の動向を見ながら増便を検討していきたい考えだ。温度帯は従来と同じ定温7度を想定している。もともと台湾やシンガポール向けではFCLでも生鮮食品の輸送需要が高いことから、混載サービスでもこうした需要を取り込んでいくことを目指している。

 また、香港向けでは、従来の横浜・神戸に加えて博多出しのサービス開始も計画中だ。九州全般から食品の輸出需要が旺盛なことから、ゲートウエーとして博多出しを新たに開設して取り込みを目指す。このほか、ひんやり混載は韓国・釜山やドイツのハンブルク、英国フェリクストウ向けでもそれぞれ月1便で提供。地域によっては内陸輸送にも対応している。欧州では日本酒の人気が高まっており、欧州向けの取り扱い増・増便も今後の目標だ。

 一方、輸入ではイタリア発日本向けで海上混載サービスを提供中。提携する現地代理店によるサービスで、サービス頻度は月1回程度と不定期ながら、高価格帯のワインを中心に堅調な取り扱いがあるという。