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2020年9月28日無料公開記事

【辰巳商会100周年特集】 溝江輝美会長インタビュー 100周年は通過点、顧客に感謝し次世代に期待

溝江輝美会長

辰巳商会本社ビル

 大阪を基盤に総合物流業を営む辰巳商会が、1920年(大正9年)9月28日に創業してから、今日で100周年を迎えた。現在では、海運、港運、倉庫、陸運、航空貨物、プラントなど、国内、海外で幅広く事業を展開している。溝江輝美代表取締役会長はインタビューに応じ、「100周年は通過点にすぎない」と位置付けた。顧客からの信頼を受けてきたことにも感謝の言葉を述べ、今後、新型コロナウイルス感染症で変化していく時代を見据えて、バトンを渡した西豊樹代表取締役社長に「変化を見つけて対応してほしい」と、次の世代への期待を示した。(文中敬称略)
■安全を中心に信頼を築く
 
 ――100周年を迎えた感想について話してほしい。
 
 溝江 私が入社したのが昭和45年(1970年)なので、今年でちょうど50年になる。当社が100周年を迎えたのだが、私はその半分いることになる。100周年は節目であり、会社としては通過点と感じている。お世話になった方々に対して、100周年を迎えることができたことを伝え、感謝しつつ、会社としてはこれから先に長期的継続していくことを考えて、通過点と思っている。
 
 諸先輩の歩まれた道を見てきて今日の私がある。社内だけでなく、顧客から学ばせていただき今日がある。顧客に当社を指導していただき、感謝しないといけないと私は思っている。
 
 また信頼関係を築いて顧客とともに歩んできたが、信頼は安全を中心にしたものでなければいけない。安全はすべてに優先するということだ。顧客の意見も聞いていい仕事にしていく。そういう考え方に立脚して諸先輩が進み、われわれもそう歩んでいくべきと思っている。
 
■南港進出は大きな変化
 
 ――これまでを振り返って。
 
 溝江 高度成長期が始まりだしたころ、安治川沿いに倉庫ができたりして、ものすごく忙しかった記憶がある。毎日現場に出ていて、机に座っている時間もなかった。倉庫、港運と仕事をしてきた。大阪港でコンテナ船が荷役するようになったが、コンテナリゼーションで変わったと思った。
 
 当社にとって大きく変わったのは、大阪南港への進出だった。コンテナバース、ライナーバースL4・5への南港進出だ。また阪神大震災での対応も一番大変だったと記憶している。そういう変遷で取り扱う物量も増えてきた。
 
 ――今では総合物流業として多岐にわたっているが、事業ごとの割合は。
 
 溝江 海運が35%、港運17%、倉庫27%、陸運13%、航空5%、プラント3%だ。
 
■サプライチェーンを注視
 
 ――今年、新型コロナウイルス感染症が拡大して、世界は大きな影響を受けた。これからについて、どのように見ているか。
 
 溝江 100周年の通過点以降、コロナのある中でどのような形で展開していくのか、サプライチェーンがどうなるのか、その流れをきっちり受け止めないといけないと思う。
 
 コロナで変わるのは間違いない。コンテナは基本的に変わらないが、その内容だ。生産地が中国からベトナムやタイに移行し、モノの流れが変わるかもしれない。生産拠点が日本に回帰することもあるだろうが、そのときは輸出は増えて、その分輸入は減ることになる。
 
 わかりやすい例で木材をあげたい。昔、輸入された木材は、南洋材であれ北洋材であれ、貯木場に置かれてあった。それで大阪港の住之江界隈は製材業が盛んだった。製材してから市場に出されていた。その後、住宅業界でツーバイフォー(2×4)工法が広まると、製材は現地で輸出前にやるようになった。すると住之江では製材業が見られなくなった。モノが変化し、かつモノの流れも変化した。こんなふうにサプライチェーンがどう変わるかは注視しておきたい。
 
 コロナとはこれからも付き合っていかないといけない。私が思うには、貨物の絶対量は変わらないと思う。貨物の絶対量は変わらないが、航路は変わるだろう。小回りが利く船がいいのか、2万TEU積みの大型船が使われるのか。そこは見ておかないといけない。
 
 ――生産拠点を国内に回帰させる動きもある。国内生産すると雇用も生まれる。
 
 溝江 私は、大阪港は輸入港に限定すべきではないと思っている。これから輸出に変わるかもしれない。ただ、生産基地は以前とは違う可能性もあるだろう。
 
■変化の時代に若いパワーで
 
 ――社長の在任時(2009~19年)に力をいれたことは何か。
 
 溝江 これといってなかった。ただ諸先輩がやってきたことの流れの中で、投機と投資の区別はしてきたつもりだ。バブルの時期、諸先輩は投機はしなかった。投資と言えるのは南港進出だっただろう。投機はしなくて、投資は積極的なスタンスでやってきた。投資という言葉が適切かどうかわからないが、諸先輩がやってきた大きな遺産を残していただいたと思っている。
 
 ――西社長に期待することは。
 
 溝江 全員でまとまってやっていくことをやってほしい。常に若い力を引き出していく。若い力を伸ばすことを考えていってもらいたい。それが会社の力になると思う。今は変化の時代だ。変化を見逃すことなく、変化に対応できる力を見つけだしてやってほしい。若いパワー、そういう人たちが伸びていく時代だと思っている。期待している。
 
 
 【略歴】(みぞえ・てるよし)香川大経済学部卒。1970年辰巳商会に入社。南港コンテナターミナル所長、港運事業所所長、取締役、常務取締役を経て、2009年に代表取締役社長に就任。19年8月、現職に就任。73歳。
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