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2021年7月20日無料公開記事

夏季特集2021~激変マーケット動向~

米国では実入りコンテナが引き取られずに積み上がった(写真は米ロサンゼルス港)

 新型コロナウイルス禍で1年が経つ。航空、海運マーケットは大きく変化し、その流れは現在も続いている。サプライチェーンに大きな影響を与えているマーケット動向を見ていく。
【トップメッセージ】
 
航空貨物運送協会(JAFA)・鳥居伸年会長
航空貨物輸送体制の維持を
 
 昨年来、世界全体が新型コロナウイルス感染症への対応に追われています。2020年度(20年4月~21年3月)の輸出航空貨物取扱量は前年度比4.2%減の87万1780トンでした。年度当初の4~6月は大きく落ち込みました。夏以降は米国などでのIT(情報技術)関連の巣ごもり消費、自動車産業の生産回復、また、不足する海上コンテナの影響等が相まって回復が進みました。今年の各月実績は17~18年の水準に達しています。
 
 20年度の輸入貨物取扱量は対前年度14.4%減の82万3206トンでした。前半は前年同月比20~30%減で推移し、輸出に比べますと回復ペースは緩やかでした。直近では過去数年の実績近くまでは回復が見られます。国内航空貨物取扱量は31.1%減の34万5393トンと厳しい状況です。
 
 コロナ禍でのこの1年近く、業界として果たすべき「エッセンシャルワーク」の役割に各社が向き合い、各国・地域での感染リスクやロックダウン、旅客便の減便の影響を受けながらも、ワクチン等医薬品や防護資機材の輸送を含め、航空貨物輸送の体制を何とか維持してきました。輸送力はコロナ禍前と同様のスペースとは言えない状況が続いています。顧客のニーズにより安定的に対応できる体制がとれるよう、旅客便ネットワークの更なる回復が待たれる状況です。
 
 コロナ禍以降の時代を見据えた対応も揺るがせには出来ません。今年6月15日には25年までを対象期間とする「総合物流施策大綱」の閣議決定がなされました。中期的なわが国の物流施策の言わば「羅針盤」が示されたといってよいでしょう。当協会としましても、物流のデジタル化、効率化、強靭化、航空安全の確保など、新大綱と関連する施策上の諸要望の実現に向け、引き続き関係機関との対話に努めて参る所存です。
 
 東京五輪・パラリンピックが開催目前です。航空貨物の保安措置や警戒警備に対し万全を期しますとともに、関係者の皆さまや会員各社とともに円滑な交通流が確保できるよう工夫・協力に努めてまいります。
 
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国際フレイトフォワーダーズ協会(JIFFA)・渡邊淳一郎会長
「コロナ後を見据えて」
 
 コロナ禍で暑い夏を迎える中で、日々奮闘されている物流業界の皆さま、本当にご苦労さまです。
 
 たび重なる緊急事態宣言の発出、延長が繰り返される状況下で、「エッセンシャルワーカー」として、緊張感を持って職責を果たされている皆さまに深く敬意を表します。
 
 7月に入り、まだまだ予断を許さない状況ではありますが、ようやくワクチンの接種も進んできました。昨年から欧米で開発されたワクチンをいかに確実に輸送するかに注目が集まりましたが、われわれ物流業者は経済活動を裏方で支える存在であるとともに、国民の安全安心のためになくてはならない存在であることも改めて認識されたことと存じます。
 
 JIFFA会員の多くが取り扱うコンテナ輸送の状況も昨年から一変致しました。昨年の今ごろはリーマンショック後のような貨物数量の落ち込みに直面しておりましたが、その後、巣ごもり消費に代表される需要の急拡大が発生、コンテナ船のスペースはひっ迫し、輸送効率は著しく低下する事態となりました。金融危機で多くを学んだこともあって、世界経済の回復は予想以上に順調でしたが、反面、資材費や物流費の高騰によるインフレ懸念など、世界経済はまた新たな難しい舵取りをしていく局面に入っています。
 
 われわれが過去何度も経験したように、特殊事情によって盛り上がった需要はどこかで修正されるはずです。波動性の高い本業界で、一時的な需要の拡大は、その分、大きな反動を招くことを見据えておくことが重要です。運賃の修正、環境に配慮したリードタイムや輸送モードの変化など、われわれを取り巻くコロナ後の環境は間違いなく変わるでしょう。われわれがそれを見据えて、安定したサービスを提供することによって、サプライチェーンを守っていく役割はますます重要になっていきます。
 
 ポストコロナを見据えて、世界がまた力強く成長を維持できるように、われわれ物流業者もいまはしっかりと力を蓄えて、成長を支えていこうではありませんか。
 
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【航空マーケット】
 
高水準一転、需給見極め困難に

■GW越えて自動車関連一服

 昨年秋から続く海上貨物の混乱と、世界的な経済活動の回復が相まって2021年の日本発着の航空貨物市場は活況な幕開けとなった。特に輸出は、世界各地のロックダウンなどの影響で需要が落ち込んだ昨年5月に、リーマン・ショック直後の最悪期である09年2月以来となる月間5万トン割れを記録していたが、秋以降に本格的に回復して今年1月は航空輸出混載重量が8万7558トンと、19年の水準に戻した。さらに2月は約2年ぶりに9万トン台に載せ、3、4月は11万トン台と、過去10年間で最高水準の物量となった。
 
 特に4月までの荷動きを牽引したのが自動車関連だ。SUVなど自動車販売の好調な北米向けでは、2月からKD部品などの緊急空輸が発生。成田や中部から貨物機チャーターも実施された。自動車関連に強い大手フォワーダーが取扱量を伸ばし、郵船ロジスティクスは過去最高の実績を記録した。
 
 そこから一転、ゴールデンウィーク(GW)を境に北米向けの緊急空輸は終息して、5月の輸出重量は8万8292トンと4月に比べ2万トン以上減った。ただし、スペース不足が続く中でコロナ前の19年の実績は上回っており、異例の高水準だった2~4月からは一服するものの、堅調な荷動きやタイトな需給環境が続いているとの見方が強い。
 
■北米、アジアで運賃高止まり
 
 運賃水準も高止まりとなっている。現行の夏季ダイヤの開始に向けて2月後半から3月にかけて航空会社とフォワーダーの運賃交渉が行われたが、上記の自動車関連の需要急増、“船落ち”貨物の増加など、ちょうどスペースひっ迫が深刻化していた時期だった。それまで運賃上昇も比較的穏やかだった近距離アジア向けも含めて運賃が上昇。欧米向けのスポレットレートなどキロ1000円超えも見られ、平常時では考えられない水準となった。上海や台湾など貨物便の運航が多い主要仕向地向けでもキロ200~300円にまで高騰した。
 
 現在は2~4月頃と比べて需要も落ち着いているが、北米路線やアジア路線では値下がりは見られない。大手フォワーダーの購買担当によると「2、3月は価格をつり上げて交渉してもスペース確保ができなかったが、現在はスペース確保に困るほどではないが、価格がそのまま維持されている状況」という。
 
■収益悪化懸念で仕入れ様子見
 
 フォワーダーは今後の仕入れ戦略に頭を抱えている。市況を左右する自動車関連の荷動きが予測できないためだ。北米向けの荷動きが落ち着いた要因は、世界的な半導体不足でセットメーカーが減産措置を採っていることにある。2月頃に北米向けの緊急空輸が始まった際、当初大手フォワーダーには年度末の3月末までと通知されていたようだ。しかし、実際に需要は4月末まで継続。それ以降も引き続き高水準の出荷が続くかと思いきや、GW明けに急速に波が引いていったという。
 
 ただ、2~4月の勢いには及ばないにせよ、自動車関連の荷動きは堅調だ。スポットで瞬間的に物量が急増することもあり、「それが続くものなのか、拡大するのか、はたまた瞬間風速なのか、見極めが困難だ」とフォワーダーの販売担当は口にする。
 
 昨年末から今年3月は需要拡大が異常なペースで進んだため、フォワーダーは強気の仕入れを行っても、取り扱いを増やし、利益を拡大することができた。しかし、現状は需要の行方が読めず、高値でスペースを購入して利ざやを減らしてしまうことも想定される。
 
 例年、夏場は閑散期でスポットレートも低下する。昨年も旅客便の大幅減で春頃は急激に運賃が上昇したものの、夏場はある程度の下落も見られていた。今年は昨年に比べてタイト感があるも、市況が不透明なことから運賃相場が読みにくい。秋以降のピークシーズンに向けてスペースの確保を進めていかなければならないが、現状の運賃水準で仕入れて物量が伸びなければ収益が悪化してしまう。
 
 他方、コロナワクチン接種の進む米国など旅客需要が回復し、航空会社が機材や空港スロットを国内線など旅客便に振り分けている。これまで旅客機を貨物便に転用してスペース不足を補填していた面もあり、スペース縮小の懸念が生じている。また、日本路線でも一部で旅客便が復便しているが、各国での新たな感染の波など予測不能なリスクもある。貨物運賃についてしばらくは、フォワーダー、航空会社ともに様子見の状況が続きそうだ。
 
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【海上マーケット】
 
異例の海上混乱、市場に翻弄
 
■北米から欧州、アジアに波及
 
 振り返ってみても、異例の事態に翻弄されてきた。
 
 昨年前半、世界で猛威を振るう新型コロナウイルスの感染拡大により、世界中で工場の稼働率が大きく下がり、生産活動が停滞した。一大消費国の米国では、小売り在庫が減少していった。
 
 いち早く再開した中国では、遅れを取り戻すように急ピッチで生産が行われ、夏以降、ストップしていた貿易の歯車が急回転を始めた。低調だったアジア発北米向けの輸送需要が上昇していった。
 
 アジアと欧米を結ぶ東西航路を筆頭に、ロングホール(長距離航路)から本船スペースが急減した。一方で、北米西岸港湾ではロックダウン(都市封鎖)などで人手が減少、荷役効率が低下していた。荷役を待つ沖待ちの日数が伸び、航海時間は長くなり、船社が投入船腹を拡大したにもかかわらず、結果としてコンテナ船サービス全体で供給が伸び悩むようになった。
 
 ロングホールでアジア域内の港間のアロケーションの割り当てが減ったことやアジア域内の荷動きも活発となり、近距離航路にもひっ迫が波及。一部を除く近距離航路もスペースが急減していった。
 
 ロックダウンによる人手不足などで、米国などではトラック輸送力や倉庫の作業力も減少。輸入国では、揚げられた実入りコンテナが、港で、倉庫で、工場で、手を付けられずに積み上がっていったという。船社は近年、市況停滞を受けて新造コンテナの発注を控えていた。従来より新造バンが入ってこない中で、実入りコンテナの滞留が悪化。デバンニングが進まないことで空コンテナが生まれず、中国を筆頭にアジアの輸出国に空コンテナの回送が進められたけれども、枯渇していった。
 
 スペースがひっ迫し、空コンテナ手配も難航するようになったことで、運賃は急上昇した。昨秋~足元まで、航路や仕向け地によって、一旦小休止する時期もあったものの、おおむね急激な角度で右肩上がりを続けた。想定をはるかに超える過去最高レートの更新が相次ぎ、フォワーダー・NVOCCの固定レートである「FAKレート」が適用されることは一部を除いてなくなり、スポットの「プレミアム・レート」が当たり前となった。
 
 ピークシーズン・サーチャージ(PSS)を筆頭にさまざまなチャージも設定され、運賃に加算。現状、運賃は揚げ地、積み地の両端のコストを除く、「オール・イン」で示されることが多くなっている。
 
 そして新型コロナウイルスの第2波、第3波が襲い掛かり、世界中で再度のロックダウン、生産停止が起こった。スペース、コンテナ、運賃に加えて、本船スケジュールが乱れ、遅延に次ぐ遅延が連鎖した。
 
■日本に飛び火、逆境で奮闘
 
 読者の皆さんこそよくご存じのように、日本も例外ではない。昨秋から本船スペースがアジア発に優先的に割り当てられ、日本出しの供給も急減した。空コンテナ不足も日本に飛び火した。アジア発に追随するように、一部の近距離航路を除き、日本発の運賃も急騰した。
 
 当初は中国の春節(旧正月)明けには、次に日本の5月の大型連休後には、「回復するかもしれない」と言われてきた。しかし、スエズ運河の一時封鎖、北米西岸港湾に続く欧州主要港、中国華南地区港湾の混雑があり、そしてこれから夏場のピークシーズンに差し掛かる。運賃レベルは、「少なくとも年内はコロナ前に戻ることはないだろう」というのが大方の見方だ。
 
 国際海上輸送を支えるフォワーダー・NVOは逆境の中、顧客のため、海上貿易を支えるため、「エッセンシャルワーカー」として前を向いて業務にまい進している。
 
 国際フレイトフォワーダーズ協会(JIFFA)がまとめた2020年度の国際複合輸送実績は、TEUベースで日本発輸出が前年度比7%減の約184万TEU、日本着輸入3%増の302万TEU、輸出入合計1%減の486万TEUだった。年度上期は輸出が前年同期比16%減、輸入5%減と記録的な下げ幅だったが、荷動きの急伸に応じて会員各社が奮闘し、下期は輸出2%増、輸入10%増といずれもプラスとなり、盛り返した。
 
 中国などアジアと比べて相対的に安い長期契約の海上運賃が、長年の慣習で恒常化していた日本。アジア発にスペースを“買い負け”する現実は、日本が決して独自の市場でなく、世界の海上コンテナマーケットの一部であることを改めて示している。
 
 未曽有の海上コンテナ市況の混乱は、国際物流にかかわるプレーヤーが予期できたものではなく、新型コロナの副産物として市場が生み出したものにほかならない。「運賃はマーケットが決めるもの」。過去にとらわれ
ずに、国際物流の原点であるこの認識に立ち戻ることが、求められている。
 
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【国際航空輸送動向】
 
供給回復に地域差
 
 国際航空運送協会(IATA)が今年4月に発表した、民間航空会社の業績予測では、今期(2021年1~12月)は前期よりも営業損失規模が半減する見通しが示された。6月に発表した21年第1四半期業績(サンプリング調査)でも、損失レベル(売上高に占めるEBIT利益率)は最低だった昨年第2四半期より大きく改善している。純損失は、国内旅客市場が回復に向かう北米で縮小しつつある一方で、アジア太平洋では拡大するなど、徐々に地域差が出てきた。
 
 今もなお、航空貨物輸送力は貨物機や旅客機を転用しての貨物便の輸送力に大きく依存している。国際線旅客便の回復にはまだ時間がかかりそうだが、需要の強さはまだ続きそう。今年3~5月の国際PMI(製造業購買担当者指数)新規輸出発注水準は54.4と、過去5年平均より4.6ポイントも高い。IATAが6月に行った貨物首脳陣への調査でも、総じて、貨物需要は強含みで推移していくという見通しが示された。
 
 航空会社のコストのおよそ2割を占める燃油価格は20年半ばごろを底に、価格上昇基調にある。新型コロナワクチン輸送量は今後一層増えていく。今年上期にあったような、急激で大量の海上貨物からのモードシフトが、また発生しないとは限らない。とっさの対応力、供給する力がよりいっそう求められていく。
 
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日本発着貨物が堅調推移
空港実績、通年も高水準確保へ
 
 日本発着の国際航空貨物(国内全空港の総取扱量)が今年に入って大幅な伸びを記録している。財務省関税局が発表した5月の実績は前年同月比47.6%増の31万9375トンだった。4月(51.7%増)と比べて伸び率は鈍化したが、国際航空貨物量は高い水準で推移している。旅客便の大幅な運休が続き、空港によって貨物量の推移にばらつきが見られる中で、成田空港の国際航空貨物量が全体の実績を底上げしている。21年上期の水準と比べると下期は伸び率が落ちる可能性はあるものの、年間を通じた国際航空貨物量は前年よりも高い水準を記録することが予想される。
 
■成田は3月に過去最高実績
 
 関税局と東京、大阪、名古屋、沖縄地区、門司の各税関が発表した空港の貨物取扱量はグラフのとおり。20年は新型コロナウイルス禍に伴う旅客便の大幅な運休が発生。スペースに制約が生じたため、昨年は春前後に貨物取扱量が落ち込んだ。それ以降は旅客便のベリースペースを利用した「旅客機貨物便」、貨物専用便の運航が活発になったことを受けて供給が回復。貨物量も大幅に増加した。
 
 もともと貨物便が多く運航され、かつ旅客機貨物便の発着も目立つことになった成田空港に貨物が集約される傾向が強まった。20年夏以降、成田空港を発着する国際航空貨物量の伸びが顕著となった。各地の空港と成田空港を結ぶ保税転送(OLT)も増加した。全国の空港の国際航空貨物量に占める成田空港のシェアも65%前後に高まった。
 
 今年に入っても成田空港の国際航空貨物量は堅調に推移している。特に3月の国際航空貨物量は24.3%増の23万3871トンとなり、過去最高を記録。前年からの増勢基調を維持しつつ、繁忙期にあたる3月で重量水準がさらに高まった。海上輸送の混乱などで自動車部品などの輸送需要も取り込んだ。それまでの成田空港の国際航空貨物取扱量は04年10月に記録した21万3719トンが最高だった。
 
 成田空港は4月も50.4%増の21万7309トンを取り扱った。3月に続く過去2番目の国際航空貨物量となった。5月は49.0%増の20万5244トン。3月や4月と比較すると取扱量は減少したものの、3カ月連続で20万トンを超えるなど、増勢基調を保った。
 
 21年上期の全国の空港における国際航空貨物量(本紙予想)は、積み込み量は94万6000トン前後、取り降ろし量は97万トン前後となりそうだ。
 
 ワクチン接種や移動需要動向を受けた旅客便需要の先行きが注目される。旅客便が本格的に再開されるよう
になれば、旅客機貨物便を含む貨物専用便の運航、供給スペースの動向にも影響を与えることが見込まれる。世界経済や貨物需要動向と相関しながら、今年下期から来年にかけて、国際航空貨物市場は重要なターニングポイントを迎えることになりそうだ。
 
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未曽有のコンテナ市況、終わり見えず
構造的供給不足が続く懸念も
 
 「2021年のコンテナ船業界の利益総額は1000億ドル(11兆円)に達する可能性がある」。英海事コンサルティング会社のドゥルーリーはこのほど、こうした内容のレポートを取りまとめた。目を疑うような数字ではあるが、今年前半の市況推移を見る限り、必ずしも夢物語とは言い切れない情勢となりつつある。過去に例を見ない市況高騰は、始まって既に1年が経過しようとしているが、なお終わりは見えていない。
 
■第1四半期のみで既に20年超え
 
 英海事コンサルティング会社のドゥルーリーは、6月末に公表した「Container Forecaster」の最新版で、2021年のコンテナ船業界のEBIT(利払い前・税引前当期利益)総額が1000億ドル(11兆円)に達する可能性があると発表した。実際、既に21年第1四半期(1~3月)の時点で、主要コンテナ船社の利益は空前の水準に達している。異例の荷動き増と運賃市況の高騰のため、一部の船社では第1四半期単体で20年通期を上回る利益を計上している。
 
 増益傾向はさらに加速しそうだ。グラフは、上海航運交易所が公表するSCFI指数で、20年1月から21年6月末までの北米西岸・東岸および北欧州・地中海向けの運賃推移を取りまとめたもの。過去1年半の運賃推移を振り返ると、これまでに大きく分けて3段階のステップで市況が高騰していることが分かる。スケジュール混乱や船腹・コンテナ不足が世界的な問題となったのは、20年10月以降。北米に遅れて欧州向けでも需要回復が始まり、東西両航路で市況が高騰した。一方で、コロナ禍の最中であるため港湾処理能力や内陸の輸送キャパシティは低下しており、このため世界各地で港湾混雑や貨物の滞留が発生し、現在まで続くコンテナ不足も世界的な問題に発展していった。
 
 この後に、第3波として再び市況を大きく押し上げる要因となったのがのスエズでの座礁事故だ。特にアジア―欧州航路や、半数近くがスエズルートを使用するアジア―北米東岸航路が大幅に急騰。北米東岸航路に関しては、混雑が悪化していたロサンゼルス・ロングビーチ港からの貨物シフトで新規サービスが開設され、需要も伸びていただけに強い影響を受けることとなった。
 
 また6月には、塩田港がコロナ感染拡大の影響で半停止状態に陥り、市況はさらに加速した。塩田港のオペレーションはほぼ平常化したが、スエズと同様その後のサプライチェーン混乱の影響が強く、運賃はさらに上昇。結果として、欧州向けの運賃水準をスエズ座礁事故の前後で比較すると、事故の前と後とでほぼ倍近い水準にまで高騰している。
 
■年内収束は困難との見方強まる
 
 既に船社や物流関係者からは「年内の混乱収束は困難」との見方が強まりつつある。また過去数年間、新造船発注が非常に少なかったため、21年の船腹増加率4.2%増に続き、22年は2.8%増と船腹の伸び率が小さい。このため22年のコンテナ船業績は、市況の正常化で21年比では下落したとしても、なお歴史的な観点で見れば巨額の利益を生む可能性がある。ドゥルーリーは、「足元の発注ラッシュで23年には供給過剰の状況が生まれる可能性はあるが、一方で環境規制が歯止めになると考えられる」とも指摘しており、コンテナ船の構造的な供給不足が中期的に続く可能性がある。
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