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2021年11月16日無料公開記事

農水産物・食品輸出物流特集2021

 新型コロナウイルス禍で2年目。農水産物・食品の輸出物流では引き続き、航空、海運ともにスペース確保が課題だ。これはドライ貨物も含めた輸出物流全体の大きな課題でもある。
 航空では国際線旅客便の大幅な減便・運休が続いており、輸出入貨物の利用空港では、成田集中が進んでいる。財務省関税局による全国の国際航空貨物取扱量(確報)をみると、8月の総取扱量は前年同月比37.7%増の32万2899トン。そのうち、成田は41.7%増の21万2260トン。総取扱量に占める成田のシェアは、コロナ前の2019年8月が55.2%、20年8月が63.9%、21年8月が65.7%。成田の貨物取扱量は単月実績で20万トン台と過去最高水準で推移している。生産地や収穫地の近隣空港から国際線旅客便で輸出できていたコロナ禍前の物流構造は大きく変化している。
 
■スペース調達へ信頼関係を
 
 航空スペースは、海上市況混乱に伴う“船落ち”貨物の増加もあり、需給はひっ迫し、運賃の高止まりが続いている。コロナ禍前は、航空で輸出される生鮮貨物の運賃は、ドライ貨物に比べて高く設定されていた。航空会社にとり高単価な貨物でもあり、フォワーダーはスペース確保に困るケースは少なかった。ただ、運賃水準全体が高止まりしている現在、仕向け地によっては、ドライ貨物との価格差が縮小しており、スペース確保に難しさも出ている。
 
 コロナ禍1年目との違いは国の予算措置にある。
 
 農林水産省は昨年、コロナ禍での国際線旅客便の大幅な減便・運休に伴う生鮮品の輸出物流への影響緩和を目的に20年度の第1次、第3次補正予算で、予算措置を行った。具体的には、(1)航空貨物便の復便など支援対策(2)国内拠点空港への横持支援対策―を目的に予算を計上し、航空会社、フォワーダーの多くが活用した。異例の措置でもあり、第1次補正予算では20億円を計上したが、今年度はない。価格差が縮小しているドライ貨物と同様の条件で、スペース確保を図る必要がある。
 
 生鮮品を取り扱うフォワーダーの中には、新規も含めて、多くの航空会社からスペース確保へ動いているケースもある。航空会社との信頼関係を構築するためにも、苦心して調達したスペースをしっかりと使い切ることが重要という。ただ、生鮮品の出荷量は、計画的な生産・出荷が可能な加工食品とは異なり、安定しない面もある。スペースを確保し、使い切るためにも、現地バイヤーを含めた顧客情報を早期に入手し、貨物取扱量を確実なものとしたうえで動く重要性も高まっている。
 
 需要自体は現地の活動制限の影響を大きく受ける。フォワーダーからは、「厳しい活動制限の下では飲食店舗の営業体制が限られるため、一部ではオンライン取引で家庭用の需要も高まった。ただ、飲食店舗が再開した際の需要はまったく異なり、オーダーは大幅に増える。航空、海上スペースの需給ひっ迫は続いているが、飲食店舗の営業体制が通常時に戻っていけば、日本食の需要自体は高まり、スペース問題は大きくなるだろう」との声がある。
 
■効率的な輸出物流構築を
 
 輸出物流について国は効率的な体制構築を目指している。
 
 20年12月に策定した農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略を進めるため、国土交通省と農水省は「効率的な輸出物流の構築に関する意見交換会」を設置し、今年5月に検討結果をまとめた。同会には物流事業者として、日本通運、郵船ロジスティクス、NAX JAPAN、ヤマトホールディングスが参加した。地方港湾・空港活用をテーマとした第4回意見交換会では、鹿児島県、静岡県、苫小牧港湾管理組合、オーシャン・ネットワーク・エクスプレス・ジャパン、OOCL、上組、北海道エアポート、ANA Cargo、日本航空、日本貨物航空が参加するなど、実効性のある施策について、検討が進められた。
 
 同会がまとめた7つの取り組む施策では、(1)最適な輸送ルートの確立(2)大ロット化・混載の促進のための拠点確立(3)輸出産地、物流事業者、行政などが参加するネットワークの構築(4)物流拠点の整備(5)鮮度保持・品質管理や物流効率化のための規格化、標準化(6)検疫などの行政手続き上の環境整備(7)包装資材・保持技術の開発・実装――とした。(1)は地方の港湾・空港を積極的に活用するもの。24年にはドライバーの時間外労働時間の上限規制が適用されるため、輸出産地に近い地方の港湾・空港活用の重要性が高まるとした。
 
 「国際線旅客便の大幅な減便・運休が続く中で、フライトが限られている地方空港の利用は難しい」とコロナ禍での現実を訴えるフォワーダーもある。ただ、輸出スペースがある空港や港に効率的に接続する体制は、コロナ前もコロナ禍でも同様に求められてきた。課題解決に向けた連携が引き続き、重要となる。
 
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■大阪港
「食の輸出商談会」、来年1月に開催
 
 大阪港は、食輸出の取り組みを継続的に進めており、今後も力を入れていく方針だ。
 
 大阪港は、アジアを中心に北米・豪州などと月間310便の国際コンテナ航路を持つ。内訳は、北東アジア200便、東南アジア88便、豪州など10便、北米西岸8便、ロシア4便。食品に欠かせない冷蔵倉庫も、大阪港には43棟あるのも特長だ。また、大阪府中央卸売市場が青果物に強みを持っている。
 
 食輸出のため、「大阪港を仕出し港とした海上冷凍混載輸送サービス」を構築。関西・食・輸出推進事業協同組合と阪神国際港湾会社が、同サービスを提供する物流事業者として、上組大阪支店食品輸出室(香港向け)、日本通運大阪国際輸送支店(シンガポール向け)、日新関西支社(台北、香港向け)を認定して行っている。荷主に対するインセンティブも実施している。
 
 イベントにも国内、海外で出展してPRしている。今年は「第5回日本の食品輸出EXPO」(インテックス大阪)に出展する。
 
 商談会も積極的で、2017年から毎年、「大阪港 食の輸出セミナー&商談会」を開催している。主催は、大阪港湾局、食品輸出促進地域商社連絡協議会、大阪港埠頭会社、阪神国際港湾会社。今年1月の第4回は、新型コロナウイルス感染対策としてオンラインで行った。セミナーでは、農水産品の輸送調査結果を紹介。それによると、大阪港からの輸出先は中国や香港、台湾、マレーシアが多く、品目では菓子が48%を占めた。なおシンガポールやマカオ向けは調味料がもっとも多かった。商談会は69件行われ、成立10件、商談中17件だった(21年8月末時点)。
 
 第5回は商談会のみで来年1月24~31日、オンラインで行う。参加予定は、商社8社、海外バイヤーは香港、マレーシア、中国、台湾、マカオから11社。事前申込制。参加費は無料。申込期限は11月26日まで。定員150社。セミナーは行われないが、商談成立につながりやすくするため、1月中旬に勉強会(サプライヤー向け)を開催予定。
 
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■TOPICS
農水畜産物輸出航空実績<21年上半期>
イチゴ回復、ブリ低迷続く
 
 財務省貿易統計を基に、航空輸送で輸出される主な農水畜産物の2021年上半期(1~6月)の各空港税関官署別実績をみると、輸出量は前年同期比でプラスだった。増勢が続いており、コロナ禍前の19年上半期実績を下回った品目はブリのみ。19年上半期比を品目別にみると、イチゴは86.8%増、ブドウは39.3%増、モモは75.3%増、牛肉は64.6%増、ブリは39.2%減。イチゴは例年、輸出量は中国の春節(旧正月)向けが最も多い。19年の春節向けは、暖冬で出荷のタイミングが合わず、前年同期比23.0%減の750トンと落ち込み、20年上半期も回復せず、低迷していた。一方、コロナ禍での国際定期旅客便の大幅な減便・運休もあり、一部品目は、フライトが集中する成田と関西での大幅増が続いている。
 
 農林水産省がまとめた21年上半期の農林水産物・食品輸出額は、前年同期比31.6%増の5773億円となり、過去最高だった。政府は、25年に輸出額2兆円、30年に5兆円の目標を掲げている。
 
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■中部国際空港
輸出促進プランなどで販路拡大後押し
 
 現在、中部国際空港で取り扱われる貨物は自動車関連を中心とした一般貨物が目立っているが、こうした貨物に加えて地域の特産を含む生鮮や食品も多い。例えばタイやブリといった水産物、モモやカキ、ブドウ、メロンなどの果物、鶏卵、日本酒、松阪牛に至るまで、名産品が目白押しだ。中国や東南アジアを中心にセントレアから名産品・ブランド品を輸送する需要は根強い。中部国際空港会社は産地や物流事業者、商社、航空会社などと連携して地元産品の販路拡大、輸送品質のさらなる向上のための施策を積極的に展開している。
 
 地元自治体、経済団体、中部国際空港会社などで構成される中部国際空港利用促進協議会はセントレア出発便への貨物搭載を促進する取り組み「フライ・セントレア・カーゴ事業」の一環として、2021年度(21年4月~22年3月)は「農水産物・食品輸出促進プラン」を実施している。セントレア発の国際線に搭載した農水産物や食品の輸送費の一部(キロあたり20円)を支援する取り組みだ。フライ・セントレア・カーゴ事業のパートナー企業も増加しており、農水産物・食品分野の輸出を促進する機会とする構えだ。
 
 農水産物や食品などを取り扱う市場と中部空港間のトラック輸送費用の一部(1台あたり5000円)を支援する「卸売市場輸出拠点化促進プラン」も展開している。さらにセントレアを拠点とした輸出入を後押しする「拠点化・ビジネスモデル構築支援」といったメニューもそろえている。また、20年には海外バイヤーとのオンライン商談会を開催するなど、関係者と連携して機会創出を図っている。
 
 中部国際空港会社は地元産品の輸出促進に貢献することを何より重視している。これまでも実証実験などを通じて、産地から消費者までの輸送品質のさらなる向上に向けた取り組みを支援してきた。
 
 中部国際空港会社航空営業部の福岡秀平氏は「地元産品には日本を代表する生鮮品が多い。地元空港を利用することによりリードタイムや品質維持の面でメリットがあるため、地元の皆様にさらにご利用いただけるよう航空ネットワークの拡充を図っていきたい」と説明。さらに「現在は新型コロナ禍で国際線を中心にネットワークが制約されているが、もともとセントレアの国際線ネットワークはアジアや北米、欧州など世界各地に繋がっている。新型コロナ禍の収束、航空ネットワークの回復を機に、さらに農水産物や食品の輸出を強力に押し進めたい」と強調する。
 
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■インターナショナルエクスプレス
食品輸出を中計の柱に
 
 インターナショナルエクスプレス(IEC)は、食品輸出のさらなる取り扱い拡大を進める。今年度スタートした3カ年の中期経営計画では「食品輸出の拡大」を重点戦略の柱の1つに据えた。同社は以前から食品や生鮮品の取り扱いを得意とし、過去数年は一層の強化を経営課題に掲げて食品全般の拡大を図ってきたが、市場規模の拡大が見込まれる輸出にさらに焦点を当て、取り扱いを伸ばしていく方針だ。
 
 食品輸出業務に携わるスタッフの増員、改めて営業ターゲットを設定するなど、品質と販売の両面から強化を進めている。特にサービス向上には注力しており、顧客対応の強化を優先事項としている。小川透執行役員は「口コミや評判も重要であり、まずは既存顧客の案件を大事にしなければならない。基本に立ち返って顧客の要望を丁寧に聞き、困難な条件の場合も“できません”という杓子定規の対応ではなく、解決策やより良い方法を探すというサービスを提供していく」と話す。
 
 同社では基本的に現場で経験を積んだスタッフが営業を担当しており、また、1人の営業担当が航空・海上の両輸送モードを販売している。現場のオペレーションや各工程を想定した上で、最善のサービス提案や対応を可能にしているという。新型コロナウイルス禍では各地のオペレーションにイレギュラーやトラブルも発生しているが、迅速に正確な情報を入手・提供し、最善の対応を図ることに努めている。
 
 近年の食品輸出の取り扱い概況をみると、昨年の前半はコロナの影響を受けたが、ここ1年ほどは堅調に推移しており、今年4~9月はスペース不足や輸出先現地でのロックダウンの影響などもありながら、2019年同期の実績を上回っている。野菜から果物、水産物、肉類、酒類など各種品目が総じて堅調だ。
 
 また、3年前に開始した海上輸送の冷蔵混載サービスも順調に取り扱いを伸ばしている。現在、香港向けに毎週、台湾向けに隔週で実施。酒類を中心に需要が増えているという。週によってコンテナ本数を増やして対応している。
 
 酒類の取り扱いについては、今春に酒類販売業免許(輸出入)を取得。現地コンサイニーのニーズに応じて、IECが代替して輸出者になるといったサービス展開も検討しているという。
 
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■OCS
営業・現場強化で輸出量最高に
 
 OCSは、日本各地で収穫された鮮魚、青果物、畜産品などの生鮮品を中心とした各種食料品の輸出に積極的に取り組んでいる。営業は本社営業部東京セールスセンター営業第二チーム(陣容は3人)が担当し、国内各拠点の営業部隊と連携している。新型コロナウイルス禍で輸出先の需要は目まぐるしく変化しているが、ネットも含めた営業強化と認知度向上などが実を結びつつある。食料品関連の輸出航空貨物取扱量は、今年度を通じて当初計画を大幅に上回る状況で推移。今年8月実績は単月実績として過去最高の数百トンを記録。コロナ前の19年同月比で約50%増だった。
 
 実績拡大の背景にはオペレーション体制の充実もある。コロナ禍では国際線旅客便の大幅な減便・運休もあり、スペース確保や顧客の予約対応など、現場ではさまざまな調整業務が求められる。輸出ルート確保のため、利用航空会社数も大幅に増やし、最適な輸送ルートと運賃提供を図っている。
 
 重量ベースで仕向け地の過半は香港が占め、シンガポールとマカオが続く。取扱品目は鮮魚が多く、次は和牛。鮮魚関連が多い香港向けでは豊洲市場(東京都江東区)を活用した羽田利用のスキームが強みだ。同市場7街区水産卸売場棟4階にある協力会社の転配送センターE-13内に「OCS荷受け場所」を構え、24時間の受け付け体制を敷く。同市場で競り落とされた鮮魚は午前4時30分~午前5時45分に荷受けを行い、午前6時には羽田に向けトラックが出発。出荷が集中する早朝帯にはスタッフを派遣し、貨物の取り扱い状況と品質を確認する。
 
 全日本空輸(ANA)のNH859便を利用した場合、羽田を午前9時35分に出発し、香港には午後1時10分に到着する(時間はすべて現地時間)。コロナ前の19年から、香港到着後、空港から日本食レストランを中心とした顧客への直配を開始しており、最短で午後3時30分には配送は完了する。直配は今年3月からシンガポールでも開始し、日系百貨店向けに青果物を届けている。
 
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■TOPICS
新生成田市場、21年1月開場へ
輸出拠点化を実現
 
 新たな成田市公設地方卸売市場(新生成田市場)が2021年1月に開場する。成田国際空港B滑走路東側に位置する千葉県花植木センター跡地(成田市天神峰)に整備され、成田空港の北側貨物地区などとのアクセス利便性も高いことが特色だ。現行の青果物・水産物などの生鮮食料品などの流通拠点および輸出拠点としての機能が整備・導入される。
 
 新生成田市場が実現するまでの経緯を振り返ると、成田市は16年5月18日付の成田市公設地方卸売市場運営審議会からの再整備に係る答申を受けて、再整備にふさわしい移転候補地を検討してきた。既存施設の老朽化・耐震性能などの問題から再整備を検討した結果、成田国際空港近接の立地や東関道・圏央道などの交通ネットワークを活用し、成田市のみならず、空港周辺市町をはじめ、千葉県内および東日本各地から集荷した農林水産物の輸出拠点機能を有した市場を整備することを決めた。
 
 施設は青果棟、水産棟、高機能物流棟、関連食品棟で構成。成田国際空港の近接地という立地を生かして「輸出拠点化」を実現する。
 
 高機能物流棟(公設)は輸出手続きのワンストップ化を可能とする施設。加工エリア、輸出加工エリア、ワンストップ輸出エリア、冷蔵冷凍庫エリアで構成される。例えば「加工エリア」は青果物・水産物などの農水産物に関する一次から高次までの大型加工施設、「輸出加工エリア」は簡易な小規模加工施設および商談スペースなど、「ワンストップ輸出エリア」は輸出手続きをワンストップで実施する施設として企画されている。
 
 成田市が21年に策定した新生成田市場の基本理念(21~30年度)は、「市民に安定的に生鮮食料品を供給するとともに、世界に日本の農水産物のおいしさと食文化を提供。輸出拡大を通じて日本の農水産業の発展に貢献する」としている。
 
 県内外のスーパーをはじめ、空港内の飲食店、周辺ホテルへの販路拡大、市内病院への病院食用の食材提供など、新規の販売先や需要獲得を目指す。併せて日本産農水産物の輸出ビジネス集積拠点化に向けた施策に取り組む。
 
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■上組
食品輸送で認知度が向上
 
 上組の食品輸出は、新型コロナウイルス感染拡大が始まった昨年前半は、海外の外食需要が減少して取扱量も一時減少したものの、その後は巣ごもり需要を受けて回復。食品輸出取扱量は、2020年は前年と比べて横ばいで推移し、21年は約15%増となる見通しだ。
 
 取り扱っている輸出食品は、青果物ではリンゴ、イチゴ、モモ、ブドウ、柿など。牛肉や豚肉、鶏卵など畜産物、ブリ、ハマチ、牡蠣など水産物、米と幅広い。仕向地もアジアを中心に、欧米、オセアニアなど各地に輸出。近年の傾向では、タイ向けにサツマイモが人気だ。また、オセアニア向けに豆乳の輸出が増加している。牛や豚のげっぷやおならに含まれるメタンガスを減らし、温暖化を抑制することを目的に豆乳のニーズが高まっている。今年は米ロサンゼルス向けにしめじを輸出したのがトピックス。キノコ類は水分の蒸発などあって輸送が難しい食品だ。米国で日本食品の需要が増加しており、韓国産しめじから変更したい要望に応じた。40フィートコンテナ1本満載で輸送し、その後も毎週1本輸出している。
 
 上組の食品輸出の強みは、全国に冷蔵・冷凍倉庫を確保し、食品輸送のノウハウを熟知したスタッフがサービスしていることだ。国内拠点と海外拠点を結ぶシームレスな一貫輸送を整えていることも特長。青果市場と連携し、仕向地のバイヤーのニーズに柔軟、迅速に応えて、必要なものをコンテナに混載して輸送している。複数社のベンダーから貨物を集め、海上輸送か航空輸送を選択してジャストインタイムでサービスを提供。同社は食品の取り扱いが長く、食品メーカーや商社などとの取り引きも多く、「上組は食品輸送に強い」との認知度も年々向上している。
 
 しかしコロナ禍で、海上輸送のスケジュール遅延という課題も浮上している。特にカット時間の変更は大きな課題だ。カット時間を変更すると、コンテナのバン詰めの時間も変更せざるをえなくなるなど、全体のスケジュールに影響する。そのため荷主では対応が難しくなっているため、上組に物流を依頼するアウトソーシングも増えているという。こうした声にも応えながら、今後も食品輸出を着実に伸ばしていきたい考えだ。
 
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■セイノーロジックス
冷凍LCL「ばりひえ混載」拡充
 
 セイノーロジックスは、マイナス20度の冷凍混載「ばりひえ混載」サービスで関東、関西発を開始した。これまで博多発のみだったが、2月に関西発(神戸受け)、9月に関東発(川崎受け)の香港、基隆、シンガポール向けを隔週便でスタートした。初めての冷凍品専用LCLとして始めた博多発の同サービスは開始1年が経って実績が増えており、関東や関西発の需要に応えて拡充した。
 
 「ばりひえ混載」はリーファーコンテナ(冷凍)により、マイナス20度の保冷のまま海上輸送する。博多発は昨年9月に香港向け、同10月に基隆とシンガポール向けを開始。主に冷凍の鳥肉や和牛、鮮魚、冷凍食品などを扱う。九州地区でのリーファー混載は現在、同社が唯一という。
 
 今回、神戸は上組のポートアイランドの物流センター、川崎はナカムラロジスティクスの浮島物流センターを新たに冷凍品のCFSとし、関東、関西発を始めた。「温度管理のできる保税倉庫は全国的にも需要が高く、満杯の状態だが、サービスを始めるには冷凍品のCFSが必須のため、まずは提携先の確保に尽力した」(混載輸送部営業課の神野博行課長)。
 
 定温7度の冷蔵混載「ひんやり混載」も展開し、関東、関西、博多発で香港、基隆、シンガポール向けをメインにサービスを提供している。ひんやり混載は関西発で香港向け週1便、基隆・シンガポール向け隔週便、関東と博多発で香港・基隆・シンガポール向けを隔週便で配船。主に日本酒や調味料、菓子類、加工食品などが対象だ。定温のひんやり混載は主に夏場の利用が多いが、冷凍のばりひえ混載は季節にかかわらず需要が見込める。「ひんやり混載は毎年5月ごろから引き合いが増える。一方、ばりひえ混載はオールシーズンにポテンシャルがあり、将来的には(リーファー混載の)柱になると考えている。」(同課の上野隆之課長)とする。
 
 同社は11月17~19日にインテックス大阪で開催される「第5回“日本の食品”輸出EXPO」に出展し、ばりひえ混載、ひんやり混載をPRする。同展への出展は3回目。ブース番号は「11-72」。
 
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■NAX JAPAN
新生成田市場でイノベーション
 
 NAX JAPANは11月1日から成田市公設地方卸売市場(新生成田市場)内の新拠点での営業を開始した。同市場内に確保した倉庫スペースは、成田国際空港内の貨物代理店ビル1階に賃借している既存倉庫の約7倍。「CEIVフレッシュ」や「有機食品の小分け認証」など生鮮食品関連の認証取得も進めている。佐藤啓仁取締役常務執行役員・成田営業所所長は「新倉庫では付加価値を提供することで取り扱い拡大を目指す」と話す。
 
 新倉庫は倉庫面積3400平方メートル。1700平方メートルの常温倉庫と、計1700平方メートルの冷蔵庫(0~10度)、冷凍庫(マイナス30度)を備える。陣容は、保税業務を行う「成田市場センター」、輸入カスタマーサービス(CS)、輸出CS、請求業務などを行う「業務管理」、「通関課」。総勢60人を超える。成田空港内の「成田営業所」からの配置転換に加え、10人以上を増員した。なお、貨物検査などに対応する「カーゴサービス課」は成田営業所に置く。
 
 新倉庫では、新たに生鮮食品関連の認証を取得して案件拡大につなげる。生鮮貨物など厳格な温度管理が必要な貨物のハンドリング品質を保証するCEIVフレッシュは、今年度中にも取得する見込み。生鮮品を取り扱う顧客へのアピールポイントとする。有機食品の「小分け業者」としての認証取得も進めている。新倉庫内で有機農産物・有機加工食品などの小分け作業、有機JASマークの貼付作業を提供できる体制を目指す。竹井浩人取締役専務執行役員は「国の方針もあり、日本で有機農産物の生産量は拡大すると見る。有機食品の取り扱いを一つの柱にしたい」と話す。そのほか、「タイ向け生果実登録選果・こん包施設」への登録も目指す。タイ向けの果物などの選果・梱包作業といった流通加工の提供につなげる。
 
 今年度、成田営業所では生鮮食品の輸出取扱量が伸びている。同営業所の輸出貨物取扱量の9割は和牛や果物など生鮮食品だ。今年は3月、7月、9月にそれぞれ過去最高の取扱量を更新した。今年度は「DX推進室」「QC室」などの新たな部門も創設し、業務の効率化、さらなる品質向上を目指し全力で取り組んでいる。
 
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■南日本運輸倉庫
国内一貫体制と鮮度技術生かす
 
 関東一円でチルド・フローズンの食品物流を手掛ける南日本運輸倉庫(本社=東京都中野区、大園圭一郎代表取締役社長)の食品輸出入事業は国内一貫体制が強みだ。昨年11月には同社初の保税蔵置場を佐野チルド・フローズン物流センター(栃木県佐野市、以下、佐野C)で設置した。輸出事業では現在、中近東向けの魚介類および調味料、欧州向け冷凍和菓子の国内集配と佐野Cの保税蔵置場でのバンニングを手掛けている。保税蔵置場は今後も増やし、東京港、横浜港、成田空港、羽田空港での輸出入案件に対応していく方針だ。
 
 空港・港湾地区と異なり、内陸部の物流施設は人員確保の面でも強みという。輸出案件でのラベル貼付作業や輸出入案件での流通加工など、人手がかかる作業にも対応する。
 
 今年6月にはNAX JAPANと協業を開始した。食品輸出入事業ではこれまで、荷主案件ごとに国内での対応を進めてきた。フォワーダーとの協業は初。中近東および欧州向けで20フィート、または、40フィートコンテナを週2~4本程度、取り扱っている。今後、10本程度に増える予定だ。引き合いは、輸出はナシやリンゴなどの青果物、また、輸入でも青果物がある。
 
 一方、昨年7月には鮮度保持装置メーカーのDENBA(本社=東京都千代田区)と次世代コールドチェーンの実現に向けて提携した。現在、鮮度保技術「DENBA」について、現在、海上輸出での利用の可能性を探っている。DENBAは米国東海岸とシンガポール向けのナガイモの海上輸送でトライアルを行った。廃棄率は一般的に40%ともいわれるが、トライアルでは2%だったという。廃棄率低減の代替輸送として、航空ではなく、海上での可能性も示した。また、海上コンテナに「DENBA」を実装し、鮮度を維持しながら輸出のタイミングを待つこともできるという。海上市況混乱で海上コンテナスペースの確保が難しい中での対策にもなる。
 
 国内では「DENBA」を実装したコンテナや車両を実運用している。農水産物の産地にコンテナを置き、収穫後にすぐに積載し、鮮度を維持しながら各地に配送する提案も進めている。