2020年2月20日無料公開記事
大阪港特集 大阪港、渋滞緩和に本腰 物流機能強化の対策着々
観光車両と物流車両の分離(イメージ)
大阪港は、コンテナ取扱量の増加に伴い、トラック車両も増加して交通渋滞が発生している。なかでも西日本最長の大水深コンテナターミナル(CT)が配置されていて、大阪港の港湾物流の中核ともなっている人工島・夢洲(ゆめしま)は今後、2025年大阪・関西万博、誘致しているIR(統合型リゾート)の建設工事車両、開催期間中は交通量の増加が見込まれるため、さらに港湾物流に及ぼす影響が懸念されている。こうした懸念を解消しようと大阪市は、夢洲、舞洲(まいしま)、咲洲(さきしま)での物流機能強化を向上させる対策をとって、国際物流拠点、国際観光拠点を目指している。
■港勢拡大目指す大阪港
大阪市港湾局によると、大阪港の外貿コンテナ取扱量(最速報値、空コンテナ含む)は2019年1~12月分累計で前年比2%増の213万TEUとなった。大阪港は、17年は205万TEU、18年は台風21号で港湾施設など大きく被災したものの、港湾機能を回復させて210万TEUを達成した。19年も200万TEUを超え、3年連続で200万TEU台を維持することができた。
また、大阪市港湾局は19年、港湾計画を改訂し、将来の取扱貨物量をまとめた。20年代後半を目標とし、取扱貨物量は全体で9660万トン、うち外貿は4470万トン、内貿は5190万トンと推計。外貿のうちコンテナは271万TEUと見込んでおり、今後も港勢拡大を推進していく構えだが、すでに大阪港ではコンテナ車両の渋滞が発生している。
一方、夢洲は万博の会場であり、IRもここへの誘致を図っている。現在の渋滞だけでなく、建設工事や開催してからさらに港湾物流に影響を及ぼすのではないかと、事業者からは懸念する声もあがっている。そうした懸念を解消するため、大阪市は物流対策に力を入れている。
■物流機能を強化
大阪市は20年度予算案で物流対策の強化を図っている。
「大阪港における総合的なコンテナ車両滞留対策」として5000万円を計上した。前年度2700万円から大幅増額だ。具体的にはコンテナ車整理場の整備に伴う設計やゲートオープン時間延長事業を実施する。また「夢洲物流車両の交通円滑化に向けた対策検討業務」として1400万円を新規要求し、夢洲地区における物流関連車両の円滑な交通を確保するための対策も検討する。
さらに夢洲内や橋などの車線を拡幅して増大する交通量にも対応する。具体的には、夢洲幹線道路の現状4車線を6車線に拡幅する。夢洲と舞洲を結ぶ夢舞大橋も、ガードレール撤去など行って4車線から6車線に拡幅。舞洲からユニバーサルスタジオジャパン(USJ)に通じる此花大橋も、歩道を車道に変更するなどして4車線から6車線に拡幅する。夢舞大橋と此花大橋の拡幅に合わせて、舞洲幹線道路の車線も路面標示書替やガードレール撤去を行い、拡幅を実施。
これにより夢洲、舞洲は6車線化を施し、現状の1.5倍の幅とする。さらに夢洲内で物流と観光の動線分離を図るため高架道路を設ける。舞洲側から、咲洲側から万博、IRに向かう車を誘導する。万博、IRの敷地の周りには観光外周道路も施す。
また、夢舞大橋の夢洲側には小型旅客船用の係留施設も設置する。万博やIRでは、関西空港や神戸空港と結ぶ海上アクセスの役割を果たすが、早期に設けることで工事の関係者が船で渡れるようにする。
整備計画では、20年度から詳細設計を行い、工事に着工する。舞洲幹線道路、此花大橋、夢舞大橋は21年度末までに工事を終わらせる計画だ。夢洲幹線道路や高架道路、観光外周道路は24年度末までに完了させる予定という。
■咲洲に一部移転も検討
また大阪市は、夢洲CTで取り扱っているコンテナ貨物を、万博の開催期間中、咲洲CTに一部移転させることも検討している。咲洲にはC1~4、C6~7、C8~9とある。これらのターミナルに貨物を振り分けることで、夢洲内の物流の混雑を緩和させる狙いだ。このうち、C6~7は公共岸壁となっていて、コンテナ船だけでなく、他の船も入る多目的埠頭だ。ガントリークレーンが2基あるが、老朽化していることもあって、さらに2基増設して咲洲の物流機能向上を図ることも検討している。
このほか、関西国際物流戦略チーム(本部長=松本正義関西経済連合会会長)の幹事会の下に、「大阪港夢洲地区の物流に関する懇談会」も設置して、官民で情報交換を行っている。渋滞対策として新港湾情報システム「CONPAS」(コンパス)の導入も検討されている。
港湾物流への影響を抑えるさまざまな取り組みを進め、港勢拡大により国際物流拠点の位置を確かなものとし、万博、IRを成功させることで国際観光拠点としての側面も備えることに努めている。