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2021年2月24日無料公開記事

【大阪港特集】 大阪港湾局 万博も見据えた多様な物流交通対策打ち出す

 2020年は新型コロナウイルス感染症が世界に拡大して、大きな影響を及ぼした。そうした中、大阪府市の港湾局が統合して「大阪港湾局」が昨年10月に発足し、新組織としてスタートした。コロナ禍が続いているが、大阪港の人工島・夢洲(ゆめしま)で開催される25年大阪・関西万博への準備も進んでいる。懸念される港湾物流の停滞を回避するため、大阪港湾局は多様な対策を打ち出している。
■4年連続で200万TEU台
 
 大阪港湾局によると、大阪港の2020年外貿コンテナ取扱量(速報値)は前年比1%減の211万TEUだった。新型コロナの影響で2月に落ち込みがあったが、その後、回復に向かっていき、4年連続で200万TEU台を維持する結果となった。なお堺泉北港の外貿コンテナ取扱量は3万TEUで、両港を合わせると214万TEUだった。
 
 大阪港湾局は発足とともに、今後の方向性について「大阪“みなと”ビジョン」を策定している。物流に関しては、国際コンテナ戦略港湾・阪神港として、集貨、創貨、競争力強化を挙げて、2020年代の外貿コンテナ取扱量の目標を277万TEU(大阪港、堺泉北港の合計値)としている。その貨物量増大で活躍が期待されるのが、夢洲のコンテナターミナル(CT)だ。大水深バース、大型ガントリークレーンを備えてフル稼働している。
 
 しかし夢洲では、25年に日本では55年ぶりとなる万博が開催される。現在、会場整備のため、埋立・盛土が急ピッチで進められている。来年度からは、万博の開催や物流機能の強化に向け、幹線道路や橋梁の拡幅工事、物流車両と観光車両を分離するための高架道路の整備工事、大阪メトロ中央線を延伸して夢洲までつなぐ地下鉄(北港テクノポート線)工事なども本格化する。工事車両はこれから増えていく見込みだ。
 
 万博事務局の2025年日本国際博覧会協会は昨年12月、基本計画を発表した。万博に来訪する一般の自家用車は、会場から約15キロ圏内に設ける会場外駐車場でバスに乗り換えるパークアンドライド方式を採用し、夢洲への乗り入れは原則禁止とした。
 
 大阪港では今後も取扱貨物量が増加し、コンテナ車両も多く通行。さらに万博の会場となる夢洲には、準備のための工事車両や関係車両なども増加していく。その物流車両と万博関係車両により、交通渋滞が発生し、それぞれの業務に支障が出ないようにするため、大阪港湾局は対策を打ち出し、準備している。
 
■本格化する物流交通対策
 
 物流交通対策は21年度予算案に多く盛り込んだ。
 
 まず新港湾情報システム「CONPAS」(コンパス)を導入して、ゲートでの処理時間を減らす。CONPASは、コンテナターミナルのゲート前混雑の解消やコンテナトレーラーのターミナル滞在時間の短縮を図り、コンテナ輸送の効率化および生産性の向上を図ることを目的として国土交通省が開発した。すでにこれまで、横浜港で試験運用も実施されている。
 
 大阪港でも導入するための準備に入る。CONPASシステムと民間システムの連携、阪神港で活用する携帯端末の購入、同システムの開発と予算化して備える。来年度に試験運用を行い、23年度までに導入を図るスケジュールだ。
 
 コンテナ車の整理場も整備する。夢洲には、夢舞大橋の近くにあるシャーシ・プールを移転するなどして、240台分を確保する。咲洲(さきしま)でもC4近くに整理場を設けて、150台分が置けるようにする。夢洲と咲洲の2カ所で計390台分のコンテナ車の待機場所が追加整備されることになる。
 
 夢洲CTの荷捌き地も拡張する。ゲート前に待機スペースをとることで100台分を確保。ゲートも増設して、1時間当たり120台分の待機車両を削減する想定だ。
 
 さらに、万博会期中、夢洲への車両集中を低減させるための方策について、関係者と協議・調整を進めている。
 
 CTのゲートオープン時間の延長はそのひとつ。通常は平日は午前8時30分~11時30分と午後1時30分~4時30分、土曜は午前8時30分~11時30分となっているが、早朝に延長時間を設ければ、延長時間30分で最大200台を分散させることができるという。
 
 空コンテナの返却場所を一時移転することも計画。現在、夢洲CTでは実入りコンテナを引き取るため、また空コンテナの返却のために車両が通行している。どちらも昼間に通行するため、万博時は渋滞が予想される。そのため夢洲から実入りコンテナを引き取り、倉庫などに輸送した後、空コンテナをすぐに夢洲に戻さず、咲洲の空コンテナの一時置場に仮置きする。夜になってから空コンテナを夢洲に移送するという仕組みだ。来年度、社会実験として実施する。
 
 また、咲洲コンテナターミナルのC6・7は公共岸壁で、岸壁延長600メートル、水深12メートル、ヤード総面積は12万平方メートル、ガントリークレーンは13列対応が2基。同じ13列ガントリークレーン2基を増設して、計4基で会期中のコンテナ物流を支える。
 
 万博開催まで、あと4年。大阪港での物流機能を維持しつつ、万博の円滑な開催に向けた取り組みが進められている。
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