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2021年4月27日無料公開記事

【カンダホールディングス特集】 原島藤壽社長インタビュー 変化の年を“シンカ”の年に DX、営業深耕、コンプラ強化

原島藤壽社長

 先端技術の実用化や新型コロナウイルス禍での経済・社会の変化により、物流を取り巻く環境は急速に変化している。カンダホールディングスは今期(2022年3月期)のスローガンを「変化の年を“シンカ”の年に」と定め、3つの“シンカ”に取り組む。デジタルトランスフォーメーション(DX)による「進化」を図るほか、既存顧客の営業「深化」を進める。またコンプライアンスやガバナンスの強化により自らの「真価」を問い正していく。原島藤壽代表取締役社長に事業方針などを聞いた。(文中敬称略)
■国際拡大へ航空・海上連携
 
 
 ――前期を振り返って。
 
 原島 やはり感染予防対策が最優先事項だった。事業所でクラスターが発生してしまうと、業務が止まり、顧客の物流も止めてしまう。体温の測定、マスク着用の徹底、職場の除菌、ソーシャルディスタンスを保つなど日々の感染予防に取り組み、本社など管理部門ではテレワークの推進にも取り組んだ。
 
 第3四半期までの業績では減収増益となり、利益面では通期予想を上方修正した。当社は一般消費者向けの品目の扱いが多く、巣ごもり需要の拡大で取り扱いが伸びた顧客もあり、日本国内ではコロナでの大きな影響は受けていない。特に生協やドラッグストア向けの業務が堅調だった。そこに加え、軽油価格の下落やコロナ禍で交通費や社内イベントなどの経費が縮小したのも前期増益の要因となっている。
 
 国際事業については、日本でも感染拡大が始まった春頃に国際宅配の取り扱いは激減したが、年度後半から回復してきた。足元のペガサスグローバルエクスプレス(PGE)の業績も上向いている。海上輸送でのコンテナ不
足などもあったが海上輸送のニュースターラインも大きな影響は受けていない。
 
 ――今期は3カ年の中期経営計画の最終年度となるが、中計の最終年度の経常利益目標22億円に対し、2月に発表した前期通期業績予想は経常利益21億7000万円だ。2年目で中計の最終目標に到達する可能性もあるのでは。
 
 原島 決算数値は集計中なので分からないが、着地数値によっては数値目標を見直す必要はあると考えている。一方で売上高は大きく計画値に未達なので、もっと伸ばしていかなければならない。先に述べたように、増益の主因は経費が縮小したことにあり、経費削減だけで利益を増やしていくのも限界がある。本来は新しい仕事を獲得し、利益を伸ばしていくのが健全な成長のあり方だ。またグループの団結力を高める上で社内イベントやレクリエーションなども大事であり、コロナ収束後にはまた開催していきたい。社内では現状の数値に浮かれることなく、新規案件獲得を進めてほしいと話している。
 
 ――今期の事業計画について聞きたい。
 
 原島 「変化の年を“シンカ”の年に」をスローガンに各種の取り組みを進めていく。コロナの影響で環境は変わっており、また東京五輪・パラリンピックも開催されたとしてもかなり縮小開催となる。当初の規模での開催を想定していたホテルや観光業等は業績悪化も見込まれ、今以上の「不況」になりかねない。そうした起こる変化に柔軟かつ迅速に対応していかなければならない。
 
 シンカには3つの意味を込めた。「進化」、「深化」、そして「真価」だ。「進化」ではDXなどの取り組みを強化していく。また本社に先端技術プロジェクトチームを組織しており、その部隊を中心に省人化、省力化を主とした各種技術の検証や現場への導入を進める。
 
 ――具体的には。
 
 原島 まずは医薬品のGDP(医薬品の適正流通基準)対応だ。以前から取り扱いの多い分野だが、競合他社の参入も加速している。求められる取り扱い要件の変化に機敏に対応していかなければ生き残っていくのは難しい。温度管理技術の導入や車両の整備を進めていく。
 
 加えて、現場での省力化に向けて自動化や機械化を推進する。既に一部のセンターでアシストスーツや追従型の自動走行台車を導入しているほか、無人フォークリフトや自動梱包装置などの研究を行っている。ただそうした技術も汎用性のあるものなら良いが、顧客ごとの業務の特性もあり、全ての顧客に使えるかと言えばそうではない。費用対効果も見ながら進めている。また、点呼ロボット等は技術面だけで見れば直ぐに導入したいが、実用に際し、法律や規制が追いついていないところもある。業界団体などを通じて国に規制緩和も呼びかけていきたい。
 
 ――「深化」とは。
 
 原島 コロナ禍で顧客とのコミュニケーションが変わってきており、飛び込みの営業が難しくなっている。新規の顧客獲得も大切だが、まずは既存顧客の営業深耕を図っていく必要がある。当社はグループ会社が26社あり、それぞれ独自のサービスを提供していることが強みだ。ただ、顧客に対し、全カンダグループのサービスを紹介できているかと言えばそうではない。管理職や営業スタッフの意識改革を行い、顧客にグループのサービスを売り込んでいく。その為に管理職会議などで各グループ会社がサービスを説明・紹介する場を設けるところから進めている。
 
 ――深堀りできる余地があると。
 
 原島 そうだ。環境は変化しており、例えば近年はATMや銀行の支店が縮小し、量販店や飲食店などから売上金を回収する現金輸送のサービスが伸びているが、そういった顧客に対し、会員向けダイレクトメールの業務を得意とするグループ会社を案内できる余地がある。当社には約3500社との付き合いがある。そこを見直していけばチャンスはある。
 
 ――「真価」について。
 
 原島 当社では昨年、子会社の不祥事があり、再発防止に向けカンダグループとして会社をどう変えていけるのか、「真価」が問われている。ガバナンスの強化、コンプライアンスの徹底を図っていかなければならない。不祥事の背景として人事の固定化が問題になっていた部分もある。グループ会社のトップや役員の異動をより活発にし、新しい空気を吹き込んでいく。
 
 その一方で、持株会社としてグループ会社の個性や特色を生かしていかなければならないとも考えている。そこは内部監査体制を充実させ、また経費・会計の透明性を高めることで、チェック機能を強化し、両立を図りながら当社グループへの信用を回復させていきたい。
 
 ――他の注力点についても教えてほしい。注力する品目やサービスは。
 
 原島 ドラックストアや食品関係向けのサービスは一層の強化を図っていきたい。昨年開始したネットスーパ
ー業務の売上は堅調だ。大手総合スーパーの店舗に常駐して梱包から個人宅等への配送を行うもので、神奈川県から開始し、顧客の評価を頂きエリアも千葉県、都内23区内に拡大している。他にも北関東でオフィス用品の小口配送業務も受託するなどの実績も出ている。巣ごもり消費の拡大で宅配やeコマース(EC)関連は伸
びており、引き続き対応していく。
 
 ――国際事業の成長戦略について教えてほしい。
 
 原島 当社の売上高全体における国際事業のシェアを伸ばしていきたい。日本の人口は縮小していく一方で、海外は拡大しており、成長余地を考えると海外に目を向けていかなければならない。
 
 ただ、自前で現地法人を設立して事業拡大するのは難しいとも感じている。直近ではインドネシア現地法人の閉鎖を決定している。同法人は2015年に設立し、黒字化を目指して事業を展開していたが、コロナの影響で赤字が拡大してしまった。今後はアライアンスを組んで、他社の力も借りながら進めていくという方向性で展開していきたい。
 
 当社の国際事業の強みはPGEの国際宅配であり、EC関連などの需要も取り込みながら、取り扱いを伸ばしていく。軸足はそこで変わらないが、近年は海上輸送のニュースターラインとの連携も強化している。同社の社長を務める上村明はPGEの常務取締役を兼務しており、互いの顧客の紹介や、航空と海上のサービスを総合的に販売するなどの取り組みの「深化」を進めている。
 
 ――以前からESG(環境・社会・ガバナンス)経営にも注力している。
 
 原島 環境対応はさらに強く取り組んでいきたい。電気自動車の導入や、施設でのLED照明、太陽光発電装置の導入などを行っている。コストや効率、業務への支障などを見極めながら今後も進めていく。
 
 ――人材採用や働き方について。
 
 原島 コロナ禍で採用環境も変化している。例年の新卒採用は20人程度だが、今年は応募を多くし、47人の新入社員を迎えた。ドライバーの採用も一時期に比べて応募が増えている。ただトラックの運転経験がないという人もあり、当社では栃木県足利市に教習所を設けて、ドライバーの教育を行い、十分な品質が担保できるよう、教育にはより一層注力していく。
 
 女性が働きやすい職場というのも取り組みの1つだ。今期の新入社員も女性の方が3倍近く多く採用し、女性の積極採用とともに、男性、女性問わず誰でも働ける現場作りを進めている。物流センターで託児所を設置しているところもある。現在は2カ所だが、センターを新設する際は託児所の設置も検討したい。将来的には女性管理職、役員につなげていきたい。
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